ブルボン エリテの“エリテ”は英語にすると“Elite(エリート)”。この銘柄はアラビカ種ブルボンの優秀な樹同士の交配を繰り返したエリートです。ブルボンはコーヒー史に名を残した古い品種。一時は世界中で栽培されていましたが、最近は生産性の高い品種や病害に強い矮性品種に押され、主品種として栽培する生産国はわずかになってしまいました。しかしこの品種の価値を認め、特性を生かして栽培している農園を、エル サルバドルで見付けました。
COFFEE HUNTERS STORY
ブルボンのエリート
優性種同士を掛け合わせ、その品種の持っている個性を際立たせ更に向上させたものを、"エリテ"と呼びます。ブルボン エリテは、樹勢が良くブルボンの特徴を持っている樹を選抜し、その掛け合わせを繰り返し作ったブルボンの優性種です。
グアテマラ国境寄りのサンタ アナ火山の山麓で、地道な交配作業を繰り返してこの品種を作りあげたのは、ロベルト マティス レガラード氏です。ブエノス アイレス農園とサン ホセ農園を経営する氏は、あの知られざる品種であったアラビカ種ケニア(呼称)を世に出すことに全面的に協力してくれたGrand Cru Café セルバ ネグラ農園のオーナーでもあります。何代にも渡ってコーヒー産業に関わってきた一族のロベルトは、エル サルバドルの主品種であるブルボンの可能性を追求したのです。
ブルボンの可能性を追求~ロベルトの挑戦
ロベルトは、ブルボン エリテを農園の中でも一番栽培環境の良い場所に植えました。
そればかりではなく、シェードツリー(日陰樹)用に植えているマメ科高木種の枝の剪定方法を変え、枝を伸ばして通常より多くのシェードを作り日陰過多の状況にしました。ブルボンは、日陰を必要とする品種です。多過ぎると収穫量は減りますが、自然の間引き状態となって、一粒ずつのチェリーが、密度の高いおいしいコーヒーになるのです。
ロベルトの後継者
2008年、「ホセ、あと2年待ってくれ。きっとおいしいコーヒーをつくるから」、そううれしそうに僕に語ってくれたロベルトは、残念ながらブルボン エリテ発売の前に亡くなってしまいました。彼との約束を果たし、日本のコーヒーラバーズにこのコーヒーを紹介することでき、大変うれしく思っています。そして、数多くのコーヒー通をうならせたブルボン エリテが、今年も日本に届きました。
2010年1月霊前に捧げるボトルに入ったブルボン エリテを持って、エル サルバドルを訪問しました。ロベルトの後継者になることを決心した三女のクラウディアは、その製品を見て本当に喜び、「父に見せたかった」と涙ぐんでいました。顔を上げたクラウディアは、僕の目を見てロベルトの意思を継ぎ、僕と一緒にコーヒーを作り続けると約束してくれました。
どんなに素晴らしい環境に恵まれた農園でも、農園主の志が品質を大きく左右します。きっとクラウディアは、マティス一族の血を引き継ぎ今後もおいしいコーヒーを作ってくれるでしょう。