エル サルバドルで生まれた大粒で収量の多いパカマラをグアテマラの名園、サン セバスティアン農園の1,700mの畑で育てました。通常のウォッシュトの倍の時間をかけて丁寧に乾燥したナチュラル(非水洗式)のコーヒーは独特のフルーティーな味わいです。
COFFEE HUNTERS STORY
世界に認められたパカマラ
※パカマラ(左)とブルボン(右)の大きさの違い
1980年代終わりに、中米エル サルバドルの国立コーヒー研究所ISIC(Instituto Salvadoreño de Investigaciones del Café)が世に出した人工交配種パカマラは、当初話題にもならずあまり評価されていませんでした。
アラビカ種の中で、樹高も葉も実も一番大きなマラゴジッペは、ブラジルで発見された突然変異種で、高品質にも関わらず収量も少なく樹高が高いので収穫が面倒というデメリットがあり、栽培する産地が減ってしまいました。
一方エル サルバドルで起きた突然変異種のパーカスは、品質も安定し小振りで多収量の注目される品種に育ちました。そこでISICの遺伝子課の研究者達は、この二品種の良い点だけを兼ね備えた、大粒で高収量のかつ収穫しやすい交配種を作るプロジェクトに挑戦しました。そして20年以上の歳月を掛けて品種として確立されたのがパカマラです。
1990年代後半から始まったスペシャルティー コーヒーのブームは、アメリカのコーヒー業界を変えて行き、量より質を求めるようになりました。そこで注目を集めたのがパカマラでした。当初エル サルバドルの一部の生産者だけが植えていたパカマラが、現在では世界各国の志の高い生産者の間で認められ栽培されるようになりました。
サン セバスティアン農園のパカマラ
※ナチュラル(手前)とウォッシュド(奥)
5代目当主のエストゥワルド・ファジャも、やはり志の高い生産者です。国際相場の変動に囚われず、常に高品質のコーヒー作りを心がけ、農園を最高の状態に維持し、精選工程もなんの妥協もしません。そして常に新しい取り組みをしています。もちろん彼もこの新しい品種パカマラに興味を持ち、農園内の1,700mの畑を開墾しEl Porvenir Pacamara(パカマラの未来)と名付け試験栽培を始めました。彼にとって未知の品種パカマラが、どんな環境に適しているのか見極めるために、先ず農園の真ん中の高さに植えました。
2012年初めての収穫は、ほんの僅かの収量でしたが、僕はその出来栄えに驚きました。パカマラの特徴であるしっかりとしたボディを持ちながら、僕の知っているエル サルバドルのパカマラとは、また違った趣にある風味を醸しだしていたのです。
2種類の精選方法
収穫前にエストゥワルドと相談して、このパカマラは二通りの精選方法で仕上げることにしていました。環境に恵まれた畑で採れたパカマラは、120年以上のコーヒー栽培・精選の経験を持つ、サン セバスティアン農園の最高の技でウォッシュト(果肉を除去して粘質を取り除いてから乾燥)で精選すれば、フルボディーの中に透き通った透明感のあるクリーンなカップを提供してくれると思いましたし、ナチュラル(果肉を付けたまま乾燥)で仕上げれば、しっかりしたボディはそのままに、きっと凄くフルーティーで、ワインでいえばブルゴーニュのような味わいになるのではと予想したからです。
ナチュラル
ナチュラルは、コーヒーを赤い実のまま果肉も粘質(ミューシレージ)も一緒に乾燥させて一気に脱穀する方法で、非水洗式とも呼ばれています。ウォッシュトに比べ手間も時間もかかるため、高い品質のものを大量に作るのは容易ではありません。
エストゥワルドとは、プルミエ クリュ カフェのブルボンで既にナチュラルのコーヒーを作っていましたが、彼は品質に関して非常に慎重な男です。出来栄えに満足し、徐々にその量を増やしていったブルボン・ナチュラルも少量のコーヒーから始め、徐々にその量を増やしていきました。
しかし、今でもナチュラルの量は限られています。その量はブルボンとパカマラを合せても、麻袋にして15袋もありません。これは、農園の全収穫量の0.3%にも満たない量です。
最初にトライしたブルボンの経験を活かし今回のパカマラに挑みましたが、果肉が厚めのこの品種には更に神経を使いました。丁寧に作られたパカマラ ナチュラルは、完熟したブドウのようなアロマとフレーバーと、濃厚な口当たりに包まれたビターチョコレートを思わせる上品な酸味を感じます。しっかりとしたボディ感、ジューシーで魅惑的な強い甘みはきっとあなたを虜にすることでしょう。
最高の環境と、妥協のない高い技術に育まれた同じ畑で栽培されたパカマラが、精選方法の違いでどのようにその特性を表現するか、ぜひパカマラ(ウォッシュト)とあわせ、2つの銘柄の飲み比べをしてお楽しみ下さい。
LABEL STORY
甘露とも言いかえられうる程のとろけるような口当たりには、心のどこかを虜にしてしまう魅力と、全てをゆだねられる安心感が内包されている。